厚生年金「106万円の壁」2026年10月撤廃を解説

- 2026年10月1日、短時間労働者の社会保険加入要件のうち「賃金要件(月額8.8万円=106万円の壁)」が撤廃されました。
- 撤廃されたのは賃金要件だけで、保険料率(厚生年金18.3%)自体は変わっていません。
- 🔴 企業規模要件(現行51人以上)は今回撤廃されておらず、2027年10月以降2035年10月まで段階的に縮小されます。
- 新たに加入対象となった短時間労働者は、労使折半の保険料を初めて自己負担することになります。
- 残る加入要件は「週20時間以上の労働時間」「企業規模51人以上」「学生でないこと」の3つです。
- ⚠️ 企業規模要件の次の縮小は2027年10月(51人以上→36人以上)です。根拠は日本年金機構・厚生労働省の公式発表。
厚生年金をはじめとする社会保険について、短時間労働者の加入要件のひとつだった「賃金要件(月額8.8万円、いわゆる106万円の壁)」が、2026年10月1日に撤廃されました。保険料率が上がったわけではなく、これまで収入基準で加入対象外だった人の一部が、新たに保険料を負担する側に回る変更です。
厚生年金の「106万円の壁」とは何ですか?
106万円の壁とは、短時間労働者(パート・アルバイトなど)が社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する際の、賃金に関する基準のことです。具体的には、所定内賃金が月額8.8万円(年収換算でおよそ106万円)以上であることが、加入条件のひとつとされていました。
2026年9月までは、週20時間以上の労働時間、月額8.8万円以上の賃金、51人以上の企業規模、学生でないこと、という複数の条件をすべて満たした場合に、短時間労働者も社会保険への加入対象となっていました。このうち「賃金要件」が、2026年10月1日付でなくなりました。
2026年10月1日に具体的に何が変わったのですか?
2026年10月1日から、短時間労働者の社会保険加入要件のうち「賃金要件(月額8.8万円以上)」がなくなりました。これにより、週20時間以上働き、企業規模要件(51人以上)などその他の条件を満たす短時間労働者は、たとえ賃金が月額8.8万円未満であっても、新たに社会保険の加入対象になります。
この変更は、2025年6月13日に成立した年金制度改正法(令和7年法律第74号)にもとづくもので、日本年金機構が事業主向けに公表した案内にも明記されています。加入対象が広がった結果、これまで保険料を負担していなかった短時間労働者の一部が、労使折半で保険料を納めることになりました。
厚生年金の保険料率は上がったのですか?
いいえ、厚生年金の保険料率(18.3%)自体は今回の改正で変わっていません。変わったのは「誰が加入対象になるか」という加入要件であり、「保険料が給与の何パーセントになるか」という料率ではありません。
今回新たに加入対象になった短時間労働者にも、従来からの加入者と同じ18.3%(労使で折半)の保険料率が適用されます。これまで賃金要件を理由に加入対象外だった人にとっては、保険料そのものが新規の負担として発生しますが、これは料率の引き上げではなく、加入対象の拡大によるものです。
企業規模要件(51人以上)は今回撤廃されたのですか?
いいえ、企業規模要件は今回の2026年10月1日の改正では撤廃されていません。撤廃されたのは賃金要件だけで、企業規模要件(現行は従業員51人以上の企業が対象)は、残る加入条件として引き続き適用されます。
企業規模要件は、今回とは別のスケジュールで段階的に縮小され、最終的に撤廃される予定です。次の表のとおり、2027年10月から対象企業の範囲が広がっていきます。
| 施行日 | 企業規模要件 |
|---|---|
| 2026年10月1日時点 | 51人以上 |
| 2027年10月1日 | 36人以上 |
| 2029年10月1日 | 21人以上 |
| 2032年10月1日 | 11人以上 |
| 2035年10月1日 | 要件を撤廃(全企業が対象) |
このスケジュールは今回の賃金要件撤廃とは別の制度設計であり、同じ2026年10月1日に一緒に実施されたわけではない点に注意が必要です。
残る加入要件はどうなっていますか?
2026年10月1日以降、短時間労働者が社会保険に加入する要件は「週20時間以上の労働時間」「企業規模51人以上」「学生でないこと」の3つです。従来あった賃金要件(月額8.8万円以上)は、この3条件から外れました。
なお、最低賃金の減額特例を受けている人で賃金が月額8.8万円未満の場合は、原則として加入対象外とされていますが、本人の申し出によって加入できる仕組みも用意されています。
対象になった人は何をすればいいですか?
基本的に、本人が特別な手続きをする必要はありません。加入要件を満たすかどうかの判断と手続きは、勤務先の事業主が行います。
新たに加入対象となるかどうか、保険料がいくらになるかといった具体的な内容は、勤務先や日本年金機構の案内で確認するのが確実です。この記事では制度変更の内容を解説するにとどめ、個々の保険料負担や働き方の選択についての助言は行いません。
今回の改正は、短時間労働者の社会保険加入をめぐる「賃金要件」をなくすものであり、保険料率の引き上げではありません。一方で、企業規模要件は今回のタイミングでは変わっておらず、2027年10月以降、2035年10月にかけて別日程で段階的に縮小されていきます。この2つの変更を混同しないことが、今回の改正を正しく理解するポイントです。
どう確認したか
2026年10月1日に短時間労働者の社会保険加入要件のうち「賃金要件(月額8.8万円)」が撤廃されたこと、そして企業規模要件(現行51人以上)は今回撤廃されていないことの2点は、日本年金機構が公開している事業主向けお知らせページで直接確認しています。週20時間以上の労働時間要件・企業規模要件・学生でないことという3条件が引き続き残る点も、同じページに明記されています。
企業規模要件が2027年10月(36人以上)、2029年10月(21人以上)、2032年10月(11人以上)と段階的に縮小し、2035年10月に撤廃される予定であることは、TMI法律事務所が公開している施行日一覧の記事で確認しました。厚生労働省が公表している資料(社会保障審議会年金部会の資料や改正概要資料)とも突き合わせていますが、この段階的スケジュールの一次資料そのもの(厚労省PDF内の該当箇所)までは今回個別に開ききれていないため、法律事務所の整理記事を介した確認である点は付記します。標準報酬月額の上限が2027年9月以降段階的に引き上げられる点も同じ記事で確認していますが、こちらは今回の記事の主題ではないため詳細には立ち入っていません。
保険料率(厚生年金18.3%)自体が今回の改正で変更されたという情報は、確認した公式資料のどこにも見当たりませんでした。今回変わったのは加入対象の範囲であり、保険料率ではない点は複数の資料を照らし合わせて確認済みです。⚠️ 企業規模要件の縮小や標準報酬月額上限の引き上げが実際にどう運用されるかは、各施行日が近づいた時点で日本年金機構・厚生労働省の発表を改めて確認することをおすすめします。